入賞者からのコメント
12月にナイトダイビングで撮った作品です。水温は約10度、透明度は約6m でした。1週間前にも同じ場所に潜ったのですが、その日はマクロレンズでタツノオトシゴをねらっていました。そのとき、たくさんのカワハギが水草にくっついたり泳いだりしているのを見て、次はワイドレンズで撮ろうと思いました。 1週間後、ワイドレンズを持って同じ場所に潜ると、同じようにカワハギは集まっていました。そこで廃網や廃ロープでカワハギたちが休んでいる姿を撮影しました。
3年前、近くの別のポイントで似たようなカワハギの様子を見たのですが、ワイドレンズを用意して潜ったときにはその姿はありませんでした。次にこういう場面に出あったらぜひ撮りたいと思っていたので、うれしかったです。
真冬で水温は低く、長時間潜ったので寒かったです。思い返すと、カメラをもう少し下げて、上向きのアングルでも撮ればよかったかもしれません。
知人の紹介で日本水中フォトコンテストのことを知って応募しました。多くの人が敬遠する寒くて透明度もよくない大韓民国の海ですが、そこで水中写真を撮るのが私のスタイルです。その写真で入賞することができてとても光栄に思います。
Profile
チョン ミンソク Jeon Min Seok
大韓民国大邱広域市在住の会社員。車で約2時間30分の統営がホームグランド。ナイトダイビング目的で月に2 〜3回通う。金曜夜に家を出て、土曜の朝には家に戻り週末は家族と過ごす。タツノオトシゴが多い海域なので、オスの出産シーンを狙っている。水中写真歴は9年。韓国の写真コンテストの入賞歴多数。
審査員からのコメント
たくさんのハギがロープに捕まって眠っているところでしょうか。みんなで同じ方向を向いて、まるで飾りのようにロープ全体にしがみついているのが可愛いですね。こんなに小さい魚たちが、夜な夜なこうやって必死に暗い海の中で眠っているなんて、想像するだけで楽しくなります。人間が作り出してしまった海中の異物までも味方につけて生きている魚たちのたくましさや、人間たちが海の中に残してしまった異物への怒りもまったくなく生きるピュアな姿にも、大きな感動を覚えます。潮に揺らめいているロープの形もユニークで、画面にリズム感を与えています。(高砂淳二)
ロープに群れるアミメハギですね、口でロープに食いつき流されてしまわないように寝ている姿でしょう。被写体自体はそう珍しい生き物ではないですが、これだけ集まっているのは珍しいですね。そのチャンスを逃さず、写真フレームの外周を取り巻くような円形の構図は“ 隙がない”と思わせます。右側と左側で遠近感も出ています。それを活かしているピントの範囲、つまり被写界深度も適切です。撮影の時間帯の影響もあるかとは思いますが、アミメハギとロープが黒一色の背景によって浮き出ているのが印象的です。その効果を最大限に生かした力作でした。(阿部秀樹)