入賞者からのコメント
2023年1月。珍しく南風で、冬の真栄田岬に入れる滅多にない機会でした。冬は深海魚などが上がってくる季節でもあり、期待に胸をおどらせて夜の海に向かいました。最初に手持ちライトの光に反射して、何かが小さくキラッと輝くように光るのが見えました。そーっと近づくと、20mm ほどの稚魚の胸ビレが虹色に反射し、とてつもなく美しい色彩を放っていたのです。体がスケスケな稚魚の体の中がストロボ光の入射角によって偶発的に虹色に映ることはよくあるのですが、胸ビレが虹色に反射し肉眼でも確認できたことは今まで一度もありませんでした。このイタチウオの仲間と思われる稚魚が特別だったのか、どの角度からストロボを当ててもある程度は虹色に反射していました。短時間の撮影でしたが、もっとも光彩を放つ角度を探り、決定的瞬間を収めたと思っています。
Profile
大谷翔 Sho Otani
沖縄在住、水中写真歴10年。自ら生物を探し撮影するというスタイルにのめり込み本格的に水中撮影を始める。その究極ともいえるライトトラップに出会ってからは、夜な夜な浮遊生物を追いかけている。「僕が心底惚れた浮遊系で皆をあっと驚かせたい一心でフォトコンに挑戦しました」。
審査員からのコメント
イタチウオの仲間の稚魚とのことですが、美しいですね。魚のヒレや鱗が光を反射して虹色を見せるのはたまにあることのようですが、こんなにきれいに、顔の周りを虹が取り囲むように光り輝いているシーンを捉えたのはお見事です。海の中の、ごく目立たない生き物の姿の中に、誰かが気づく気づかないは関係なく、こうして夢のような光景が潜んでいるなんて、本当に感動的です。こんな瞬間をとらえた作品を見ると、地球は謎と祝福に満ちているのだということを実感します。(高砂淳二)