入賞者からのコメント
クサウオが卵保護をしているところです。青海島以外ではこのシーンが見られる場所は聞いたことがありません。クサウオは水温が一番低くなる時期(1 〜2月)に産卵のために深海から上がって来て、海況の穏やかな湾奥の紫津浦で産卵を行います。メスは産卵後すぐに卵から離れて一生を終え、オスが卵の世話をするので、写っているのはオスのクサウオです。そして卵を産み付けたのは、水深20m に落ちている捨てられた釣り用のテグスです。「なぜこんなところに?」と思うようなところで一生懸命に卵の世話をするクサウオパパに感動しました。
クサウオの卵保護は10年ほど前から狙っていましたが、このときは9年ぶりのチャンスで興奮しました。人間が捨てたテグスに産み付けられた卵を必死に守るクサウオの姿を多くの人に見てもらい、環境問題を考えてもらえればうれしいです。
Profile
野﨑武志 Takeshi Nozaki
長崎県在住、会社員。水中写真歴は20年。水中生物・魚が大好きで、それを見たくてダイビングを始める。以前はほぼ毎週末海に行っていたが、最近は月に1 〜2回。ホームというほど通い詰める場所はないが、山口県青海島、柏島、屋久島にはよく出かける。理由は、生物の数が多くその生態が観察しやすいからだそうだ。
審査員からのコメント
クサウオが卵を保護する様子でしょうか。地球温暖化の影響で産卵床になる藻場が激減してしまい、漁業用の廃棄テグスに卵を産み付けてそれを守るクサウオの親。海底清掃で撤去の対象となる産業廃棄物ですが、それを利用して命をつないでいくクサウオをフレームの中に見事に入れ込んでいます。生態的にも、環境問題を考えさせられる上でも素晴らしい作品で、クサウオの生き様を見事に見せてくれています。(阿部秀樹)