入賞者からのコメント
フランス領ポリネシアで撮影したザトウクジラです。曇りだったり、風が強かったりするとクジラを見つけるのが困難なのですが、この日は、海に出てすぐにヒートランを発見しました。天気は晴れで、海も比較的落ち着いていたため透明度もよく、7頭のクジラが視界一面に舞う姿が観れました。南半球のザトウクジラは腹面が白く、クジラが海底近くに潜ってもキラキラと光る姿が見えます。よく写真で見るヒートランとは違って、この日はそれぞれのクジラが踊るようにメスにアピールしていたので、舞踏会とタイトルをつけました。実際にヒートランを目の前すると一頭一頭が大きいこともあり、まとめてファインダーに収めるのは大変でしたが、目の前に広がる壮大な景色は夢のようでした。
Profile
高橋優花 Yuka Takahashi
アメリカ・サンフランシスコ在住。沖縄への家族旅行をきっかけに野生動物や生態系に興味を持ち、現在の目標「獣医師として海洋動物の病理研究をすること」につながった。カリフォルニア大学バークレー校を卒業し、秋から獣医学生になる。水中写真歴は半年。「自分の写真を通して少しでも自然保護に貢献できればいいなと願っています」
審査員からのコメント
こんな言い方は失礼かもしれませんが、作品を見た瞬間「合成のようだな」と思いました。それくらい現実離れして見えましたし、構図も完璧で無駄がなかった。ザトウクジラのオスたちがメスをめぐって争うヒートランの一幕でしょうが、興奮したクジラたちが楽しく踊っているかのように見えるから不思議です。タイトル中の「舞踏会」という言葉に作者ならではの視点を感じました。水中の自然を丁寧に切り取れば、それだけで作品として成立することを再認識させられます。引き算の発想でまとめられた気持ちのいい作品です。(上出俊作)