Nikon D850 Nexus 60㎜ Macro Z-330 R GBlue BM6700B f11 1/250秒 ISO200 フィリピン アニラオ Janao Bay

入賞者からのコメント

撮影したのは新月の大潮の日。サルパに幼魚やタコがいっぱいいて、浮遊系日和でした。ダイビングの後半、黒い影が目の前を横切りました。それが歯ブラシにしがみついてるPaper nautilusのオスでした。今までプラスチックの切れ端を木の葉代わりにしてる幼魚は見たことありましたが、こんなに大きな歯ブラシに乗っかってるのは初めてだったので、驚きました。どこで見つけたのでしょうか。よく見ると、ブラシの茶色は貝に、持ち手のピンクは脚に、それぞれ色が似てるので、タコとしてはちょうどよかったのかな、という気もしました。

動きはゆっくりなので撮影に苦労はなかったです。歯ブラシの無機質な感じとタコの生感を出したかったのと、自分の思い込みを入れたくなかったのでドラマチックにならないように気をつけて撮影しました 。「ここでこれ?」というざわっとした気持ちの揺れが、美術館でみたトイレの展示を思い起こしたので、タイトルに使いました。

Profile

小海敦子 Atsuko Kokai

見た魚の記録用にTG5を使っていたが、レンタルした一眼レフカメラでいい写真が撮れたことがきっかけでカメラを購入し現在に至る。水中撮影の頻度は1週間に1回くらい。沖縄本島の東海岸と伊江島がホームグランドだ。どちらも人が少なく、のんびりしてるところが気に入っている。沖縄県在住の会社員。水中写真歴は5年。

審査員からのコメント

一次審査から気になる作品だった。ありえないようなシチュエーションに驚いたが、冷静に向き合い完成させた構図にも脱帽だ。茶色いブラシと殻が同系色であることにヒントを得たのか、これで捕食者の目を惑わすことができると考えたのだろう。生物にとってはこれでも擬態のつもりなのだ。タコブネの真剣な眼差しや柄にしがみつく仕草から、過酷な環境で生き抜くための知恵やたくましさを窺い知ることができる。黒バックで主題を浮き上がらせる手法も成功している。この作品からは小動物たちの力強い生き様が伝わってくる。(中村征夫)