
入賞者からのコメント
ここ数年、6月から8月上旬まで福浦、井田、大瀬崎、黄金崎でアオリイカの撮影に取り組んでいます。この日の黄金崎にはたくさんのアオリイカが産卵に来ていました。産卵シーンは撮れるものの、交接の様子はなかなか撮影できません。集中が途切れ、産卵床から少し離れて白くて透明感のあるアオリイカたちをぼんやりと眺めていました。頭がほぼ空っぽになったそのとき、目の前にアオリイカがふわっと現れました。すぐにオスがきて、メスの下側に入ろうとします。そこにもう1匹のオスがすっと入ってきて、1匹のメスに2匹のオスがカプセルを渡そうとしたのです。ほんの一瞬の出来事でしたが、スローモーションのように感じられました。

Profile
真木久美子 Kumiko Maki
西伊豆〈ネイチャーイン大瀬崎〉ガイド。得意ジャンルは浮遊系。週に4回はカメラを手に潜っている。仕事場でもある大瀬崎はビーチでありながら複数の環境があり、多様な生物がいる場所。写真に取り組むダイバーが多く、さまざまなアイディアやすばらしい作品を見せてもらうことで自分も張り合いが出るそうだ。水中写真歴12年。
審査員からのコメント
タイトル通り、“ 命をつなぐ”ために必死なイカの姿を捉えた作品、とても神々しいです。メスの眼はよく見えて表情が読み取れるので、オス2匹の表情ももう少し見たくなりました。目の前で繰り広げられる貴重なシーンを、じっくり観察しながら距離をつめていかれたのか、距離感がよりドラマティックに見える1枚でした。(尾﨑たまき)