
入賞者からのコメント
毎日海に出ても大物には出会えない日が続いていました。この日もあまり期待せずに海へ向かいました。いつもなら素通りするエリアでモブラを発見。群れは大きくはなく、海に飛び込んだのは私とバディだけでした。澄んだ青の世界を優雅に舞うモブラたち。多くはシャイで、近づこうとするとすぐに距離を取ります。それでも諦めずにアプローチしていると、1匹がふいに群れから外れ、まっすぐ私の方へやって来ました。「今しかない」。シャッターを切り続けました。しかし、ふと気づきました。私は後ずさりし、モブラは私を追いかけていることに。私目がけて何度も近づいてくる。その一瞬を捉えたのが、この写真です。

Profile
山口勝憲 Masanori Yamaguchi
バックパッカーとして世界を旅していた20代のころからカメラは旅の友。水中写真に出会ったとき、自然と心惹かれる。続ける理由を探して悩んだ時期もあったが、最終的に理屈ではなく本能のままに突き動かされているのだと気づく。2024年は世界10か国の海で約200本潜った。水中写真歴3年。東京都在住、会社経営。
審査員からのコメント
最後の最後まで審査員賞にするか迷った作品です。水面付近を泳ぐモブラを正面から撮影したことで、楽しげな雰囲気が伝わってきます。向こうからモブラが近寄ってくる貴重なシーン。平らなモブラが少し斜め上向きに泳いだ瞬間にシャッターを切ることでのっぺりした雰囲気ではなく被写体に動きを出したところも素晴らしいです。(茂野優太)