
入賞者からのコメント
この年は流氷下の淡水層が厚く、午前中の水温が低い時間には、海藻に氷晶と呼ばれる氷の結晶ができていました。この日の氷晶はまんまる! 海藻は淡水層に晒されて緑色に変化していて、まるで氷の花が咲いているようでした。流氷下の厳しい環境だからこそ見られる美しさに感動し、氷の花のようなかわいらしさに胸があたたかくなりました。流氷ダイビングが大好きで何年か通っていますが、氷晶を見たのは初めて。美しく撮影したいと思いました。氷晶は水温が低い午前中しか現れないので、今しかチャンスがないと思い、寒い中粘りました。淡水層と塩水層の境目のモヤモヤ(ハロクライン)が、水流で動かないように注意しました。

Profile
豊岡直美 Naomi Toyooka
ダイビングの「非日常」に魅了され、ひとつの海を見続けたくてタイの〈ビッグブルーダイビング〉でダイブマスターを取得し1年間スタッフとして勤務した。地元の北海道に戻り、住んでいる地域の海を知ろうと函館〈グラントスカルピン〉に通い、水中写真の魅力や生き物の生態を学んでいる。水中写真歴9年、保健師。
審査員からのコメント
これまで何度か流氷ダイビングを体験したが、残念ながらこのような素敵なシーンに遭遇したことはなかった。マイナス2度ほどの酷寒とは思えない温もりを感じる作品だ。いくつかある氷の結晶の中で、とても愛らしいこの被写体を選んだ着眼点が素晴らしい。海には不思議がたくさん詰まっていると改めて思い知らされる。(中村征夫)