Canon EOS R5 INON 8-15㎜ Fisheye Z-330 R GBlue f14 1/30秒 ISO1000 鹿児島県 桜島 2m

入賞者からのコメント

シコロサンゴの産卵のシーンです。夏の高水温の影響で、サンゴは一部あるいは大部分が白化した個体が多く見られ、周りのイソギンチャクはすっかり縮んで白くなっていました。手前のサンゴは白化が始まっている一方、エダサンゴが勢力を伸ばそうとしているようでした。「今年はしっかり産卵できるのだろうか…」と心配していましたが、真っ暗な中、霧が広がるように産卵が始まりました。変化する環境の中、力強く命を繋ぐ姿に感動し、シャッターを切っていきました。奥まで続くシコロサンゴの群生が「生命の種」に包まれていく様子を表現したく、水面をレフ板にして光を回しました(実際は真っ暗でした)。ファインダーの中で水面を光が伝っていく様子は、とても美しく幻想的でした。 シコロサンゴの産卵を初めて見たのは2年前。神秘的で、生命力溢れる光景に魅了されました。冷え固まった溶岩と白化しつつあるサンゴ。過酷な夏を乗り越えて力強く産卵するシコロサンゴの姿を見ることができたのは、海が見せてくれたプレゼントだと思っています。

Profile

齋藤利奈 Rina Saito

最初はログ付け用にコンデジで撮っていたが、水中写真家の写真展に感動し、レンズ交換式のカメラで撮影するように。写真好きなダイバーやガイドに巡り合い、あっという間にハマる。ここ2 〜 3年は、「生きもの達の命の営み」をテーマに撮影。生きものたちの「日常」全てに興味があり、朝から晩まで潜りたいという。水中写真歴6年、大阪府在住。

審査員からのコメント

シコロサンゴの群生が一気に産卵している、生命の神秘を感じさせてくれる圧巻の作品です。白化が始まり元気を失いつつあるサンゴと、その奥に広がる元気いっぱいに放卵しているサンゴたちとを対照的に入れ込んでいることで、自然界の栄枯盛衰と地球温暖化の両方を感じさせてくれます。水面にストロボ光をバウンスさせて撮影されたことで、自然光のない夜の海で奥までしっかり平均的に光が当たり、しかも柔らかく包み込むように卵のモヤモヤ感まで表現できています。高度なテクニックと、夜の海を果敢に攻める心意気とが功を奏しました。(高砂淳二)