Nikon Z9 Nauticam 50㎜ Z-330 RGBlueSystem03 f22 1/250秒 ISO64 沖縄本島 真栄田岬1m

入賞者からのコメント

沖縄県真栄田岬は北風が吹く冬場はほとんど近づけないのですが、この日は奇跡的にベタ凪でした。目立った出物はありませんでしたが、予定の潜水時間を迎えたので、水面付近を泳いで帰っていました。エキジット直前、水面に触れるぐらいの位置を漂っているひときわ美しい存在が目に映りました。心臓の高鳴りを抑えながら近づいて、それがフリソデウオだとわかった時の感動は忘れられません。静かな星空に浮かぶ天女のようでした。

水面には他の浮遊物が見られたので映り込まないよう意図。走行性のプランクトンがなるべく集まらないように、ターゲットライトの光量にも気を配りました。フリソデウオの鱗はグアニンという光をよく反射する成分で出来ているので白飛びしないように、かつ水面には鏡像が映るように、ストロボ照射角度には神経を使いました。

どうしても自分の手の届く海で、フリソデウオのような美しい深海魚を自分の目で発見し写真に収めたいと思っていました。

実現するまで3年かかりました。

Profile

大谷 翔 Sho Otani

水中写真歴11年。ダイビングを続ける中で、自ら生物を探し撮影するスタイルにのめり込み、本格的に水中写真を始める。その究極ともいえるライトトラップに出会ってからは、夜な夜な浮遊生物を追いかけている。「美しい被写体、誰も見たことがない光景を狙っています」。沖縄県在住。

審査員からのコメント

とにかく美しさに目を奪われました。白飛びしがちなフリソデウオのヒレや体の色合い、背景の処理、そして構図、すべてが絶妙なバランスでずっと見ていたくなるような写真でした。被写体に寄りすぎることなく全体にピンを持ってきてとてもシャープに見せ、少し抑え気味の露出でディテールもしっかり表現されている点など作者の技術の高さも感じます。深海魚との出会いは一瞬なことにも関わらずこんなにも素晴らしい1枚を撮られたのは、作者がどのような画を撮りたいかを頭に描き、それをどう仕上げるかを事前に考えられていたからなのでしょうか。そこに瞬発的な感性が加わり完成したこちらの1枚は見事としか言いようがありません。横位置で撮った写真を縦で見せることで、2匹が対峙しているようにも見えます。見せ方ひとつでこうも印象が変わるものかと、作者の柔軟な制作過程にも惹かれました。(尾﨑たまき)