
入賞者からのコメント
大学院の研究で小笠原諸島父島に滞在していたときに撮影した写真です。オフの日に比較的浅い場所で出会いました。私自身ウミガメの研究をしていたので、以前からウミガメ類の孵化幼体の半水面写真を撮影したいと考えていました。ウミガメ類のほとんどは産卵巣から脱出すると外洋域に向かって泳ぎ、次に沿岸に戻ってくるのは成長してある程度大きくなった後です。つまりこの個体は今から長く大きな旅に出ます。この“旅の始まり”を表現したかったので、力強くヒレをかく様子と生まれ故郷である背景の山を画角に収めることができて満足しています。重いハウジングを水面から少し持ち上げて、ウミガメと並走する撮影は骨が折れました。

Profile
兵頭笙太 Shota Hyodo
学生サークルでダイビングを始める。先輩がTGで撮影している様子に憧れて水中撮影をスタート。最近は環境の変化によって姿を消してしまうかもしれない生物たちを“ 記録”として撮影する意識が芽生えた。使命感もあって、ここ数年は琵琶湖水域の撮影にもよく出向いている。水中写真歴は4年半、この春卒業し東京で会社員となった。
審査員からのコメント
アオウミガメは夜に孵化し、そのまま沖を目指して泳いで行くため、日中に出会うことは稀です。粘り強くアオウミガメの幼体と出会うのを待って撮影したことが伝わってくる写真です。水底の白砂を入れることで、きっと近くの砂浜で生まれたんだろうなと想像力をかき立てられます。(茂野優太)