写真から伝わる物語を大切にしたい
茂野優太さん(Yuta Shigeno)/水中写真家
フォトコン審査で心がけていること
最も心がけているのは「写真1枚1枚と真剣に向き合う」ことです。応募者がどのような思いでその瞬間を切り取ったのか、その背景にある物語や感情を想像しながら、丁寧に写真と向き合うよう努めたいです。
僕自身、写真を見るのが好きで写真はコミュニケーションの1つだと考えています。
だから何か伝えたい思い、感動した思いがあるから写真を撮って、フォトコンに出された全ての写真は全て誰かの思いです。だからこそ、皆さんの写真1つ1つを丁寧に、今の僕なりに解釈して受け止めてお返しする。
何に感動しシャッターを切り、何を伝えたいのかを感じ取りたい。そんなことをしながら皆さんと写真を通して会話ができたらなと思っています。
審査で重視するのは?
写真から伝わる物語を大切にしたい。
写真の美しさは現実の被写体となる自然が半分、作者の目線や技術が半分だと思います。
やはり魅力的な被写体や誰も見たことがないような自然を写した写真は力強いですし、見てみたいと強く思わせてくれます。だからどういう被写体を選ぶかというのはフォトコンテストにはすごく大切だと思います。
ただし、あくまで現実は半分であって、そこに作者の目線や意図がないと面白くない。だからこそ、なぜその被写体を選び、その露出、構図、その角度から撮影したのか。何を写して何を映さなかったのか。そいうったことを丁寧に読み取っていきたいです。
水中写真を撮る理由は人それぞれですが、やっぱり何か心が動くものがあって、それを伝えたいから写真を撮るんだと思います。写真を発表をしない人もたくさんいますが、きっとそういう人も自分にその感動を伝えている、自分と対話しているんだと思います。
僕はやっぱり何か伝えたいことがあって、写真を撮っています。それは時によって違って南の島で偶然イルカに出会った時はその喜びを写真に表現したいと思うし、流氷の下に潜っている時には厳しい環境下だから起こる現象や生物たちの営みを表現したいと思います。
その伝えたいことを表現するために、美しくみせたり、構図を工夫したり、持ってる知識や技術を総動員するんだと思います。
そういった作者の思いが伝わってくる写真を選びたいと思っています。
フォトコンは自己評価とのすり合わせの場
日本水中フォトコンの審査をするにあたって、自分自身フォトコンに出したことがなかったので1度海外のフォトコンに出してみました。
カテゴリー別に15枚まで提出できるフォトコンテストだったのですが、僕が意図した思い入れのある写真は入選止まりで、意図していなかった写真がカテゴリーのグランプリだったことがあります。
つまりフォトコンは自己評価と他人の評価のすり合わせの側面もあると思います。
自分の好きな写真、自分のお気に入りの1枚が他の人にどう受け止められるか。それをSNSとは違った少しフォーマルな場で見てもらえるといった感覚で良いと思います。
応募を迷っている方へ
まずお伝えしたいのは「完璧な写真を探さないでほしい」ということです。
正直僕自身、完璧な写真が撮れたと思うことはほとんどありません。1年後に見返すと、もっとこうしとけばとかよかったと思ったり。その時の気持ちによっても変わります。だからこそ、そんなに気負わず1度出してみるといいと思います。
大切なのは、やっぱりシャッターを切った時の感動や感情だと思います。だから自分が撮れて嬉しかった写真、思わず声が出た写真、誰かに見せたくなった写真。
茂野優太 プロフィール
銀行員からダイビング業界に入るという異色のキャリアを活かして、Underwater Creatorとして、写真・映像・文章などさまざまな手段で海の魅力を伝えている。国内外の各地の海で幅広く撮影活動を展開。近年は極寒期の知床に長期滞在し、流氷下の海をテーマに撮影に取り組んできた。2024年夏には写真展「THE SOUTHERN LIMIT of DRIFT ICE 流氷がやってくる最南端の海」を開催。知床での経験の集大成として、2025年春には念願の「北極の氷河の下に潜る」撮影取材を敢行予定。
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