「自然や生き物を敬う気持ちを持って撮影を」

中村卓哉さん(Takuya Nakamura)/水中写真家

本来ある命の姿をそのまま記録する

生物に対して過度なアプローチをしていないか、ストレスを与えていないか、作為的な状況ではないか。こうした点は自分の中では大切な評価の基準です。生き物や自然を敬う気持ちで撮影されたのか。撮影時にマナーやモラルに反した行為をしていないか。やりすぎや寄り過ぎ、作った環境ではないか。写真にはそれが出てきます。

フォトセミナーでは、ふんわりとかバリカタとか言っていますが、自分はありのままの姿を記録したいと考えています。審査でふんわりを選ばないということではありませんが、生き物や自然の美しさを変え過ぎてしまっている作品には、自然を敬う気持ちが欠けているのではないかと思います。
たとえば、プランクトンが溶け込んだ緑がかった海の色を、過度に南国の海のような色に変えるのはやり過ぎです。緑の海だからこそ海藻やソフトコーラルが育まれる。栄養が豊富だから生き物が息づく。そんな海をレタッチで不自然に青くするのはやり過ぎです。レタッチがダメだというわけではないのですが、過度なレタッチは自分が伝えたい海の本来の姿とは違った方向になります。本来ある命の姿をそのまま大切に敬う気持ちで作品作りをしてほしいですね。

自然を壊す行為は厳しくチェックしたい

これは撮影モラルの部分にも通じます。いろいろな考え方がありますが、自分は撮影のために海底に生えているものをむしったり、移動させたりする行為には違和感があります。海にお邪魔している立場として、生き物に過度なストレスを与えていることになります。
環境を変えてしまうような撮り方をされている方の写真には不自然さがあります。撮影のために砂をかぶった卵からきれいに砂を払ってしまう方もいますが、本来、砂があることで外敵に襲われにくいということもありますからね。

マナー違反をして撮影された写真が評価されると、どんどんエスカレートしていきます。フォトコンテストは技術合戦ではあるのですが、審査ではやり過ぎの写真に対しては厳しく対応しないと、フォトコンでは自然を壊してまで撮ることが許されると思ってやってしまう人を増やすことになります。環境を壊すことを黙認するようなフォトコンになってしまうのは避けなくてはなりません。ですから、そこは厳しくみたいと思っています。

オリジナリティは評価される

フォトコンは写真の技術を磨いていく場です。フォトコンで賞をとって終わりではなく、その次に繋げて欲しいです。他の人が撮った写真をそっくりまねて撮ったり、SNSで「いいね」が多くついた写真を模倣しても賞は取れません。そういう写真には作者のオリジナリティが欠けています。
撮影した人の視点、オリジナリティがあるのかどうか、何かを真似して撮ったのではなくて、自分はこういう思いで撮ったというものがきちんと出ているかどうかはとても大切です。「いいね」がつけばいい、というものではないですね。審査員は、作者の視点・オリジナリティをきちんと評価しています。

フォトコンはテストではないので、迷っている方がいらっしゃるなら、マラソン大会に出るような気持ちで、目いっぱい楽しんで応募して欲しいですね。応募することでレベルの高い作品にふれられますし、刺激も受けられます。水中写真愛好家との交流が持てる場でもあります。迷ったら出す。これは人生を楽しむ秘訣です。自分はまだまだ下手だからフォトコンは場違いと考えるのではなく、積極的に参加しましょう。

中村卓哉 プロフィール
東京都出身。10歳の時に沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い海中世界の虜となる。ライフワークの辺野古の海へは20年以上通い撮影を続けている。海の環境問題や命のドラマをテーマに、新聞や雑誌に多数の連載を持ち、講演活動なども精力的に行っている。本コンテストの名誉顧問・中村征夫さんは実父。今回は初の親子での審査となる。